球技大会

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 元プロの男は中盤でゲームを支配し、縦横無尽に周りにパスを供給していた。さすがに自分でシュートを放つ気はないらしい。  しかし攻め込まれてもニコがことごとく防いでいた。好セーブを連発し、ゴールを割らせない。  目の前に迫られても、まったく恐れることなく相手のシュートを防ぐニコ。  それを見て速人が彩菜と二人で感心していると近付いてくる人影があった。 「速人、こんなとこにいたんだ。はい、これ」  茜がスポーツドリンクを渡しながら言った。彩菜にも同じものを渡す。 「ニコのやつ、凄いな。このまま引き分けになるんじゃない?」 「凄いよね。向こうは元プロ選手がいるのにまだ0対0だもん」 「あっ、でもやばいかも」  彩菜が声を上げるので見てみると、例の元プロが業を煮やしたのか自らペナルティエリアにボールを運ぶ。そして強烈なシュートを放った。  素人と違ってその速さは桁違いであったが、ニコはそれでも反応した。  しかし狙い澄ましたシュートはゴールの右隅に決まる。  驚いたことにニコの左手の先にかすっていたらしく、ニコが舌打ちしたそうな表情でいるのが見えた。 「あーあ、決まっちゃった」  茜が残念そうに言う。と言っても彼女たちのチームは準優勝。  他の競技でも上位にばかり入っていたので、かなりの数のビール券を手に入れているはずだ。 「よし、彩ちゃん。そろそろ行くか」 「はい、行きましょう! キャプテン」  さっき渋っていたのが嘘のように彩菜は元気に言った。 「あら。彩ちゃん、ソフトボールに出るんだ? 部活とかやってたの?」 「いいえ、まったく経験はありませーん」  茜が不思議そうな顔をしている。 「大丈夫。まあ見てなって」  速人はそう言って茜の肩をポンと叩いた。
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