球技大会

6/13

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
 ソフトボールの試合が始まる。  彩菜にはライトを守らせた。レフトにしようと思ったが、素人の試合なので打球が飛んでくることの少ないライトにした。経験者が多かった場合はレフトの方が負担が少ない。ライトは三塁への送球もあるし、経験者は左打ちも多い。流し打ちもしてくる。素人はその逆だ。ほとんどが力任せに引っ張る。  速人はセンターを守った。ライトよりに守備位置をとる。  そのうちにライトにふらふらっと打球が上がった。彩菜は前に行くのか後ろに行くのか迷っている。  速人は彩菜の位置を確認し、打球めがけて走った。ランナーは落ちると思ってすでに走っている。  速人は滑り込みながらその〝ライト前ヒット〟を〝センターフライ〟に変えた。  取った後、素早く二塁に送球する。ランナーは戻りきれずダブルプレイ。  その後も何度かライトにボールが飛んだが、すべて速人が処理した。  打つ方では速人は全打席でヒットを放った。  彩菜は速人に言われたとおり、バットに取りあえず当てて全速力で一塁まで駆けた。結果的にすべてアウトになったが、彼女は楽しかったようでずっと笑顔だった。  試合は結局、6対7で負けたが彩菜も楽しめたようなので速人は満足だった。  すべての競技が終わり、残すところは選抜者による野球の試合だけとなった。  チームのみんなが集まって、これまでに獲得したビール券を数える。三十本ほど貰えるようだ。一チームは約四十人なので少し足りない。  達也らのチームのところに行き、聞いてみると八十本以上貰えるそうで、すでにお祭り騒ぎだった。  そして各チームから野球経験者や運動神経のいいものが選ばれ、二チームが作られた。  速人らの担当の教官である逸見がみんなの前に現れ、マイクを握ってあることを告げる。  その内容は今まで獲得したビール券をこの試合に賭けるということだった。  どっちが勝つかの簡単な賭けだ。  もちろん速人は選抜された。同じクラスからは仁科も選ばれていた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加