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そして、ラウンドが写真を見て、一つ思う所があったようだ。
「この写真、シ式が敵機のAKライフルを持ってるけど……」
「警官を襲った奴から分捕った」
「分捕ったって──君、思ったより度胸あるなぁ」
「いや、無我夢中だったんだよ──本当に怖かったんだからさ」
そこに、カーテンの先から人影が近付いてくる。やって来たのは──ドクターだ。彼の手にはファイルが握られ、その中に隆義が見ていた操縦マニュアルが挟まっている。
「おぅ、話は途中から聞いてたぞ。……ノーマルのシ式でよくやるもんだ。ショベルカーで戦車に挑むようなモンだぜ?」
「お爺ちゃん!」
声がかかった直後、ココが素早く反応した。
その瞬間、全員がドクターに視線を向ける。
「夕凪君、紹介するよ。彼はドクター、ロボット工学の博士だ。」
「よろしくな、坊主。」
「あぁ……よろしく」
そして、ドクターの後ろからは、きゅーちゃんが黙ってついてきていた。
「!」
隆義はその姿を見つけ、安堵の表情を浮かべる。それは、きゅーちゃんの方も同様だったらしく、彼女はふよふよと隆義の隣に浮遊していく。
「よかったぁ、きがついたんね」
(あぁ……ちょっと話をしている所)
隆義は言葉を口に出さなかったが、彼が考えている事は、きゅーちゃんに伝わる。
「ここで追いつかれた後は?」
唐突に飛んだラウンドの質問で、隆義の頭は彼の顔を向く。
「まず追い付いてきたバイクの前輪を吹き飛ばして、弾切れになったのでマグチェンジ。その最中に、車とロボットが来たから──先に出てきた車の方を撃った。車は、ここの家の壁にぶつかって動かなくなってたよ」
「……塀にぶつかったなら、路地を塞ぐ形になるね。」
「で、ロボットの方が銃を撃ちながら突っ込んできたから、頭上を飛び越すつもりでジャンプした。」
カタン、と音が聞こえる。ドクターが書類を挟んだファイルを開いた音だ。
「ノーマルのシ式のジャンプ力じゃ、良くて一メートルがせいぜいだぞ?」
「ここは坂道になってて、俺の方が上の位置に居たから──あのロボの顔面を蹴り上げる形になったと思う。そいつが倒れて坂道を転がった後は、もう無我夢中で逃げた」
隆義は、スマホの画面に指を触れないよう気をつけながら、逃走経路を指でなぞるように示す。路地をジグザグに進んで行った事が、ラウンドたちにも解るように──。
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