甘い初恋

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その頃、高宗は開店していないケーキ屋の前で立っていた。 『まだ開いてるはずだよな』 高宗は裏口に行きドアを引いた。 『鍵がかかってる…』 鞄の中から携帯を取りだし吉彰に電話をかけた。 『出ないなぁ…』 10回目のコールで電話を切ろうとしたその時、『もしもし…』と言って吉彰が電話に出た。 『何で店が閉まってんだよ、具合でも悪いのか』 『やる気がしなかったから』 『お前に話があるんだ裏口のドアを開けてくれないか』 『わかった』 電話を切ると吉彰は階段をおりていき裏口のドアを開けた。 『……』 『何か食べたのか』 『食べてない…』 吉彰はふらつき倒れた。 『吉彰!しっかりしろ』 高宗は吉彰の体を支えながら階段をあがるとベットに吉彰を仰向けで寝せた。 『待ってろ、何か買ってくるから』 鞄の中から財布を取り出すと高宗は階段をおりて裏口から出ていった。 『……』 吉彰は天井を見つめながら高史のことを思っていた。 それから暫くして高宗が戻ってきた。 『弁当、買ってきたから食べろ』 『あぁ…』 吉彰は体を起こしベットからおりると座布団に座り弁当に手をかけた。 『お前がそんなふうになったのは高史さんが原因か』 『……』 吉彰は無言で弁当を食べた。 『お前が苦しんでると言うから、高史さんは自分といても幸せじゃないと思ったんだ、だから高史さんは付き合えないと言ったんだ』 『俺は高史さんといて幸せじゃないと思ったことはない』 『甘い恋は終わったな』 『何だよそれ』 『ケーキがきっかけで意識するようになったんだろ…高史さんも吉彰も男を好きになったのは初めてだから甘い初恋か』 『何か話があって来たんだろ』 吉彰は食べ終わった弁当を袋の中に入れた。 『明日、俺が勤めている男子校に来てくれないか』 『明日は日曜日だろ学校休みなんじゃないのか』 『だからだよ』 『聖子は俺から伝えておくから』 『聖子も!』 『あぁ、じゃあ明日な』 高宗は鞄を持って階段をおりていった。 ー次の日の朝、学校の門の前ー 『中に入れないのにどうやって教室に行くんだよ』 『吉彰』 『聖子』 『何してんの中に入るわよ』 あとから来た聖子は学校の隣にある公園を入り運動場に出ると玄関に向かった。
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