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『高史さん』
靴を脱ぎ捨て上がると寝室に行こうとする吉彰の前にリビングから服は引き裂かれズボンははいていない高史が現れた。
吉彰に目を向けた高史は慌てて寝室に行った。
『高史さん』
吉彰は高史を追いかけ寝室に入ると背を向けたまましゃがみこんでいる高史に声をかけた。
『もしかしてさっきの男に…』
『帰ってくれないか』
『高史さん』
『お願いだから帰ってくれ』
『わかりました、何かあったら俺の携帯にかけてください』
寝室を出ると吉彰はリビングのテーブルに目を向けた。
『ワイン…さっきの男と楽しく飲んでたんだろうな…』
床に落ちているグラスをテーブルの上に置くと吉彰は玄関に行き出ていった。
ドアの閉まる音を聞くと高史は立ち上がりうつ伏せのままベットに倒れ声を出しながら泣いた。
考え事をしながら道を歩いていた吉彰は背後から肩を叩かれ足を止めると振り返った。
『高宗!』
『1人で何をしてんだ、高史先生と一緒じゃないのか』
『聖子に頼みたいことがあるんだ』
『何だよ』
『俺の家に行こう』
吉彰は高宗を連れて家に帰った。
ー吉彰の部屋、2階ー
『聖子に頼みたいことって何だよ』
高宗は床に座った。
『……』
吉彰はベットに座りうつ向いた。『どうしたんだよ、何かあったのか』
『男の似顔絵を書いてほしいんだ』
『似顔絵?』
『お前と会う前…』
吉彰は苺と高史の乱れた姿を想像しながら高宗に話した。
『本当なのか、その男に高史先生が乱暴されたって、本人に聞いた訳じゃないんだろ』
『男が俺に言ったんだ、高史の体いいよなって…それにあの男、ビデオカメラ持ってた』
『そのビデオカメラで』
『高史さん、凄くショックを受けてたみたいだった』
『わかった、今から聖子をここに呼ぼう』
高宗は携帯で聖子に電話をかけた。
『もしもし俺だけど』
『どうしたの?』
『今、どこにいるんだ』
『家だけど』
『今から吉彰の店に来てくれないか、事情は来てから話すから』
『わかった』
『……』
電話を切ると高宗は悲しい顔をしながらうつ向いている吉彰に近づき隣に座った。
『妊娠してるのに無理を言って悪かったな』
『すぐに産まれる訳じゃないし気にするな』
ベットに座っている高宗は仰向けのまま体を倒した。
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