甘い初恋

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『……』 写真を拾った井上は男性の写真を見て驚いた。 『勇太さん』 ドアの方に目を向けたが勇太達の姿はなかった。 『今度、来たときに返せば良いか』 井上は写真を持ったままカウンターに戻った。 それから暫くして周二が店に戻ってきた。 井上は近づいてくる周二に目を向けながら『いらっしゃいませ…』と言った。 『あの、ここにいた2人の男性を知りませんか?』 『あなたは…お連れの方は控え室で休んでおられます…こちらです』 井上は先に歩きズボンのポケットから写真を落とした。 築いた周二は『落としましたよ』と言いながら写真を拾い写真を見た。 『…すみません…』 井上は周二に近づいた。 『高史!…どうしてあなたが高史の写真を』 『苺さんを連れて帰るときにお兄さんが落とされたんです』 『苺のお兄さんが…』 『お客様、こちらです』 『あ…はい…』 周二は井上と共に控え室に行った。 『伊織!』 周二はソファーに近づき伊織の体を起こした。 『もう…飲めません…』 伊織は周二に抱きついた。 『何を言ってんだ、帰るぞ』 周二は伊織の体を支えながら立たせると井上に目を向けた。 『大丈夫ですか、酔いが覚めるまでまだ休まれた方が』 『これ以上、迷惑をかけられません』 井上に少し頭を下げると周二は伊織を連れて控え室を出て店を出た。 途中でタクシーを拾い家に帰りついた勇太は苺を寝室に運びベットに寝せた。 『…高史…』 苺は寝言を口にした。 『苺…』 何度も高史の名を口にする苺の姿に勇太は悲しくなった。 『彼のことは忘れろ、彼には恋人がいる』 『兄貴に言われなくてもわかってるよ』 勇太に背を向けながら苺が言った。 『起きてたのか』 『……』 『1つ聞いて良いか、何で好きな彼を悲しませるようなことをしたんだ』 『兄貴ならわかるんじゃないのか』 苺は体を起こし勇太に目を向けた。 『どういう意味だよ』 『俺が知らないと思ったか、兄貴、バーの井上さんに惚れてるだろ』 『…何を…言って…』 勇太は頬を赤らめた。 『告白はしたのかよ』 『俺のことは良いんだよ、問題はお前だ』 『……』 『彼に気持ちを伝えて詫びをいれてふられてこい』 勇太は苺の肩に触れた。
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