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ー卒業式当日ー
午前8時、卒業式が始まった。
『無事に皆、卒業できて良かった』
『そうですね』
『……』
『吉彰から聞きました、学校を辞めるって本気なんですか?』
『はい、卒業式が終わったら校長に伝えます』
高史は微笑みながら生徒達を見つめた。
『よかったら理由を教えてください』
高宗の問いに高史は答えた。
『吉彰さんの店を手伝いたいんです、だって俺と吉彰さんを会わせてくれたケーキ達がいるんですよ』
『高史先生も吉彰も初めて男を好きになった、それとケーキ…』
『中村先生?』
高史は考え込む高宗の顔を見つめた。
『甘い初恋だ』
『甘い初恋?』
『ケーキが高史先生と吉彰を恋に導いたんだ、だから甘い初恋』
『…ケーキが…その通りかも』
高史は生徒達に目を向けた。
順調に卒業式が行われているなか井上が席を立ち校長に近づいた。
『杉山高史先生に生徒達から話したいことがあるそうです』
『高史先生』
高宗は高史を椅子から立たせた。
校長がマイクから離れると井上が前に立った。
『皆の代表で俺が言います…いろいろ有ったけど3年間、高史先生の生徒で良かったです、先生に会えなくなるのはさびし…』
井上が涙を流すと他の生徒達も涙を流した。
高史は井上に近づき井上の頭を撫でながら『先生も寂しいよ』と言った。
『高史先生』
井上は高史に抱きつき声を出しながら泣いた。
そんな姿に先生方、親御さん、校長、生徒達皆、手を叩いた。
それから暫くして卒業式は終わった。
高史と高史の生徒達は外で別れを悲しんでいた。
『皆、立派な大人になれよ』
『今度、入学してくる生徒に何かされたら俺達に言えよ』
『お前達が卒業するまで黙ってたけど、学校辞めて吉彰さんの店を手伝おうと思ってる』
『そっか…今度、ケーキを買いに行くよ』
『あぁ、待ってる』
高史は門を出ていく生徒達を笑顔で見送った。
その後、高史は校長室に行き校長に話した。
『そうですか残念です、あなたは良い先生だったから』
『すみません』
校長に頭を下げると高史は校長室を出ていった。
そして高史は吉彰の店に急いで向かった。
ー吉彰の店ー
『店長、今日、卒業式ですよね』
『あぁ』
『悲しいですよね』
バイトの女性はやって来たお客の接客を始めた。
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