甘い初恋

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『悲しいに決まってる』 『ありがとうございました』 『学校の先生って凄いよな、卒業していく生徒達の悲しみを乗り越えて次に向かう』 『高史さんは乗り越えられない性格ですよね、だから店長、慰めてあげないと』 『バカなこと言ってないで仕事をしろ』 吉彰は頬を赤らめながら階段を上がっていった。 バイトの女性はクスクスと笑った。 その時、高史が店の中に入ってきた。 『千明さん、吉彰さんは上ですか?』 『えぇ…』 再びバイトの千明はクスクスと笑った。 『どうしたんですか?』 『何でもありません…いらっしゃいませ』 バイトの千明はやって来たお客の接客を始めた。 高史は階段を上がり部屋のドアを開け中に入った。 吉彰は頬を赤らめながら振り返った。 『お帰り…』 『顔が赤いですよ、熱でもあるんじゃあ』 吉彰はおでこに触れようとする高史の手を掴んだ。 『吉彰さん?』 『大丈夫ですか…』 『何が?』 『生徒達と別れて悲しくないのかなって…』 『そりゃあ悲しいよ、だって…』 言いかけた高史は吉彰に唇を塞がれた。 唇が離れると高史は吉彰の手を掴みベットに座った。 『学校を辞めてきました』 『え!』 『明日から俺も店を手伝います』 『高史さん』 『反対ですか?』 『高史さんが決めたのなら反対しません』 『良かった』 『これでずっと一緒にいれますね』 『はい』 高史は潤んだ瞳で吉彰を見つめた。 吉彰は高史を押し倒し体を重ねた。 ーそれから2ヶ月後ー バイトの千明と並んでやって来たお客の接客をしていた高史の前に井上と松岡が現れた。 『ありがとうございました…お前ら!』 高史はにこやかな顔で井上と松岡を見つめた。 『久しぶり、高史先生』 『もう先生じゃないんだ、高史でいいよ』 『先生を辞めても俺達にとっては高史先生は先生だ』 井上の言葉に松岡は頷いた。 『そうか、ありがとう』 井上と松岡の言葉に感動した高史は涙を流した。 『高史さん、ここは私に任せて2階に行ってください』 『…ごめんね…あと宜しく』 高史は井上と松岡を連れて階段を上がっていった。 じっとしていた吉彰は井上と松岡に目を向けた。 『君達、久しぶりだね』 『はい…』 井上と松岡は床に座った。 高史は顔を洗いに洗面台に行った。
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