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『あきらさん?』
吉彰は通話ボタンを押した。
『もしもし、あきらさん』
『吉彰さん…』
『高史!…今、どこにいるんだ』
吉彰はソファーから立ち上がった。
高史はソファーに座ったまま『あきらさんの店にいます、直接、話がしたいから来てください…店の場所、知ってますか?』と言った。
『行ったことあるからわかります』
『待ってます』
高史は電話を切り携帯をテーブルの上に置いた。
吉彰は急いで家を出てあきらの店に走った。
開店の準備をしていたあきらは帰ってきた勉の顔を見た。
『お帰り』
『吉彰、店にいなかったよ』
勉はカウンターの前に近づき椅子に座った。
あきらはコップに水を入れそのコップを勉の前に置いた。
『吉彰の奴、いったいどこにいるんだ』
勉はコップを掴み一気に水を飲んだ。
『そうだね』
あきらは空のコップを掴み洗うとコップを片付けた。
『もうすぐ開店だろ、手伝うよ』
『ありがとう…営業中の看板だしてきてくれる』
『わかった』
勉は椅子から立ち上がり出入り口のドアに近づくと営業中の看板を持って外に出た。
『親父』
『吉彰』
勉は近づいてくる吉彰を見た。
『高史から電話があったんだ、あきらさんの店にいるって』
『あぁ、いるよ』
勉が答えると吉彰は店の中に入った。
『あきらさん』
『社長室にいるよ』
『……』
吉彰は社長室に急いだ。
ソファーに座ったまま高史は吉彰が来るのを待った。
『吉彰さん…』
高史が口にしたその時、ドアが開き吉彰が現れた。
『高史』
『吉彰さん』
高史はソファーから立ち上がりながら吉彰を見た。
吉彰は中に入りドアを閉めると高史に近づき抱き締めた。
『心配したよ』
『ご…ごめんなさい…』
高史は涙を流した。
吉彰は高史を離し涙を手で拭った。
『何であきらさんの店に?知らないはずだろ』
『助けてもらったんだ』
『助けてもらったってどういうこと?』
『吉彰さんの店を飛び出してから宛もなく歩いてたんだ、そしたら知らない2人の男に声をかけられ草むらに連れていかれて乱暴されたんだ…そこへ、あきらさんと吉彰さんのお父さんが通りがかり俺を助けてくれたんだ』
微笑みながら吉彰を見た高史は悲しげな顔で見つめる吉彰を見て高史は微笑みをやめた。
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