11人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー次に目をあけた時、映るのは白い天井と心配そうな表情を張りつけた家族の顔だった。
そこに父と母の姿はない。
兄や姉、育ててくれた叔父達で、目が覚めるなり大声で泣かれたり怒鳴られたりで大変だった。
あぁ。自分は生きたくなって、還ってきたんだな。
そう実感出来て、叔父に抱きしめられながら大泣きする。
都会の喧騒にはどうしても馴染めなくて、汚なくなってしまった自分に嫌気がさして、駅のホームから飛び降りた。
帰郷したと思っていたところは、無人駅は黄泉への入口だったのだろう。
あそこにいた人達は皆、もう死んでしまった人達で、おかえりなさいと言われたのはきっと、……“まだこちらへはくるな。かえれ”という皆からのメッセージだったんだ。
あの川を渡らなくて良かった。皆からの声、ちゃんと聞こえたよ。
そう伝えたら、また大泣きされてしまった。
自分はもう、当分“そこ”へは逝かないだろう。
今度こそ田舎へ帰り、きちんと生を全うする事を誓おう。
ありがとう父さん、母さん。一度だけでも、逢えて良かった……。
最初のコメントを投稿しよう!