第二章・ー真実ー

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 ーー次に目をあけた時、映るのは白い天井と心配そうな表情を張りつけた家族の顔だった。  そこに父と母の姿はない。  兄や姉、育ててくれた叔父達で、目が覚めるなり大声で泣かれたり怒鳴られたりで大変だった。  あぁ。自分は生きたくなって、還ってきたんだな。  そう実感出来て、叔父に抱きしめられながら大泣きする。  都会の喧騒にはどうしても馴染めなくて、汚なくなってしまった自分に嫌気がさして、駅のホームから飛び降りた。  帰郷したと思っていたところは、無人駅は黄泉への入口だったのだろう。  あそこにいた人達は皆、もう死んでしまった人達で、おかえりなさいと言われたのはきっと、……“まだこちらへはくるな。かえれ”という皆からのメッセージだったんだ。  あの川を渡らなくて良かった。皆からの声、ちゃんと聞こえたよ。  そう伝えたら、また大泣きされてしまった。  自分はもう、当分“そこ”へは逝かないだろう。  今度こそ田舎へ帰り、きちんと生を全うする事を誓おう。  ありがとう父さん、母さん。一度だけでも、逢えて良かった……。
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