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急に不安になり、家中駆け回って探してみるが、破れた襖に手をやられ、バサバサの畳に足を取られてその場に倒れ込んでしまう。
荒い息を吐き、埃っぽい空気に噎せ返り、知らず両目から涙が溢れて流れる。
皆一体どこへ行ったのだろう。
やっと帰ってこられたのに、都会にはもう帰りたくないのに、ここでも自分は独りにされてしまうのだろうか……?
独りにしないで欲しい。
皆と一緒にいたい。
置いていかないで。
自分は、ここにいるんだ……。
のろのろと立ち上がり服についた埃を払い家を出る。
先刻までいた人達の気配もなくて、あてもなく彷徨っていると、不意に川が目の前に広がった。
きらきらと、太陽の光に照らされて輝く川に惹かれて入ろうとする。
ーー途端、ずきりと痛みが頭の中を駆け巡る。
その場にうずくまり、頭を抱えていると、またも聞こえてくる不可解な声が……。
ーーくな……。そっち……。……ってき……。おま……。まだ……。……やい……って……ねが……。
必死に聞こえるその声につられて立ち上がり、川とは反対方向の、無人駅がある場所へと戻る。
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