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就職してから三年目。
周りの友達は、どんどん俺と差をつけていく。俺はこないだまた仕事を失敗してしまった。
『下里もいつかはできるようになるよ。』
大学の友達が言ってくれた。きっと俺に気をつかって言ってくれたんだと思う。
俺は自分が恥ずかしかった。
きっと俺はこの仕事に向いてないんだ。大学の頃は成績も一番だった。だけど、この仕事を辞めたら逃げたと思われる。それだけは嫌だ!
だから部署を変えることにした。
「今日からこの部署に入った、下里 唯那です。宜しくお願いします!」
俺が皆の前で頭を下げるとパラパラと拍手が聞こえた。
顔を上げると皆はそれぞれの仕事に戻り始める。
俺の勤めることになった部署の部屋は、そこそこ広くて机が固まって置いてある。全ての机の上に書類やパソコンが散らかっている。
机の上にダンボールが置いてある場所があるのでそこに行き、ダンボールの中身を取り出す。
「君だよね?さっき挨拶してたの。」
「え?!」
いきなり後ろから声をかけられ、振り向くとそこには顔の整った茶髪の男性がいた。
その人はニコリと笑って俺の肩に手を置いた。
「俺は大杉 ダイキ。大杉でいいから!宜しく!唯那君って呼んでいい?」
「………下里でお願いします。唯那って女の子っぽい名前で嫌なんです。」
俺が遠慮がちに言うと、そんな事を気にしないような笑顔で大杉さんは答えた。
「そうか!下里な!あ、部長にはもう挨拶した?」
「あ、いえ、まだです。何度も伺ったんですけど、不在中で。」
「あの人、サボリ魔だがらな!今なら奥の部長室に居るから案内してやるよ!」
「え!?ありがとうございます!」
大杉さんに背中を押されながら奥の個室へ案内され、ドアの前に立った。
コンコン
「部長~?生きてますか~?下里が挨拶したいみたいですよ。」
大杉さんがノックしてそう言うと、ドサドサと何かが落ちる音がして男の声が部屋から聞こえた。
『下里~?誰だよ!?知らないぞ!それより俺は徹夜なんだよ眠いんだよ!なのに仕事が終わらないんだよ!!』
泣きそうな声が聞こえると大杉さんはため息をついて苦笑した。
「それは部長がずっと仕事をサボってたからでしょ!あと、下里の事は上からきちんと連絡があったはずです!!」
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