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この部署は言ったらなんだが、徹夜するほど忙しい仕事はないはず。俺はこんな所で仕事をして大丈夫か?
「失礼しますよー?」
そう言って大杉さんはドアを開けてズカズカと部長室の中に入った。
「うわ」
思わず俺は嫌そうな声を上げてしまった。
部長の部屋には椅子と机とソファーしかない。床にはプリントが散乱していて、その散乱してプリントの上に部長らしき人が座っていた。
その人のスーツはシワだらけだが、自分とそんなに変わらなそうな歳に見える。
「それじゃあ俺は仕事あるからバイバーイ」
「え!?ちょっ、大杉さん!?」
大杉さんは俺に手を振って汚ない部屋から出ていってしまった。
もう一度、部長を見ると目があったので、仕方なく部長の前に立つ。
「ぶ、部長……?」
恐る恐る声をかけると部長はハッと、何かを思い出したような顔をした。
「お前が今日から、この部署に来た奴か!」
「は、はい!下里 唯那です!」
「お前、女の名前みたいだな。」
「うるせぇ!この野郎!!」
…………。
しばらくの沈黙が流れた。
やってしまった!上司相手に失礼なことを言ってしまった!!
条件反射なんだよ!とにかく謝らなければ!
しかし、俺が謝ろうとしたら先に部長が口を開いた。
「お前、中学と高校で同じ学校だったか?」
「………はい?」
いきなりそんなことを聞かれて戸惑っていると部長が立ち上がって俺の肩を叩いてきた。
「俺、中山 達也!覚えてないのか?」
「…………あ。」
中山 達也。
たしかに中学と高校、同じ学校だったか。しかも高校の時なんか三年間も同じクラス。
明るいやつで、男子から信頼されていた。
だけど俺は一度も中山とは喋ったことない……。
「中山か。今、思い出した。」
「忘れるとか酷いな!特にお前のお兄ちゃんの佑衣斗とは仲良かったぞ!」
「佑衣斗兄ちゃんか……。」
佑衣斗兄ちゃんとは双子で、暗かった俺と違って佑衣斗兄ちゃんは明るく、人懐っこい性格だ。
「唯那、それで俺は返事を効いてないんだが?」
「へ、返事?なんの?」
「は?勿論、告白のだよ。」
「………はぃ?!なんだよそれ!?」
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