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「ある意味、すごいよね。だってさぁ、小学校のときだって、三年生の時以外は、ずっと同じクラスだったでしょう?」七海が、記憶を振り返りながら口にする。
「そんなことって、あるんだね」美咲も、素直に驚いている。
拓海も、つくづく縁があるのだなと感じていた。幼稚園の時も含めれば、実に、十年間で九回も同じクラスだったわけである。
(そりゃ、親同士も仲良くなるわけか)拓海は、母親同士が、ママ会と称しながら、しょっちゅうランチやおやつを一緒に食べていることを知っていた。
「ところでさぁ。新垣って、どう思う?」海斗が、新しく担任になった新垣先生のことを呼び捨てにした。
「どう思うとは?」美咲が、首をかしげる。
「なんか、すげー、熱くない?」
「確かに」
「多少、うざいかも」
七海が、さらっと言ってのけた。
「拓海は、どう思っているんだよ?」
海斗から問われた拓海は、返事を考えた。正直、いつもあんなテンションで来られるのはきつい。しかし、言っていることは、まともである気もする。
拓海は、先ほどの道徳の授業を思い浮かべた。お金を稼ぐことは大変なのだという意味も、わかったような気がした。千円稼ぐためにはどれだけの仕事をしなければならないのかの例えが、とてもわかりやすかった。
拓海は、その感想を口にした。
「千円稼ぐためにはか……」お金に対する執着心の強い海斗が食らいつく。
「もっと、自由になるお金が欲しいな。小遣い、上げてくんないかな」
「何か、買いたいものでもあるの?」
七海から問われた海斗が、「何かって言われても困るんだけど、いろいろと欲しいものがあるし……」と頬杖をついた。
「プレステ4とか、タブレットとか、マウンテンバイクとか……」欲しいものを口にしながら、指を折り曲げていく。
「私も、タブレットは欲しいな。それ以外だと、服とか、あと、犬も欲しい」美咲も、欲しいものを並べる。
「私も、服と犬、欲しい」
女子二人が、服と犬で、欲しいものが被った。
「オレは、何だろな。自分専用のテレビとブルーレイが欲しいな。そしたら、好きな番組をいつでも見られるし」
拓海も、日頃から思っていたことを口にした。
自由になるお金がもっと欲しいというのは、四人の共通の思いであった。
「宝くじでも当たんないかな」海斗が、真剣な表情で呟く。
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