第1章

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 「その宝くじを買うのにも、そこそこのお金がいるからね」  「最低三千円だもんな」  「枚数をたくさん買わないと、当たる気がしないしね」  「オレたち四人でお金を出し合ってさ、宝くじを買ってみるか」  美咲と拓海のやり取りを聞いた海斗が、身を乗り出してきた。  「いいかもな」いつか宝くじを買ってみたいと思っていた拓海も、相槌を打つ。  「私は、気が進まないな」七海が、反対意見を口にした。  「なんで?」  「だって、宝くじって、買った人が損になるようにできているんでしょう? 確か、賞金に回されるお金は、売上金の半分くらいだって聞いたことがある。ということは、宝くじに関して言えば、百円が五十円の価値にしかならないってことだから、馬鹿らしい気がする」  理論派の七海らしい意見であった。  みんなで宝くじを買おうという盛り上がりが、急速にしぼんでいった。  「バイトも禁止されているし、拓海みたいに臨時の小遣いが入ってくる当てもないし、宝くじもダメってことは、新垣先生の言う通り、大人になるまでの間は、親に感謝をしながらお金のありがたみを感じていなさいってことなのか」  海斗が、自嘲気味に笑った。  「そんなに、お金が欲しいの?」七海が、海斗に視線を向ける。  「七海だって、欲しいだろう?」  「そりゃ、あったら嬉しいけど……。あのさぁ、今思いついたんだけど、みんなで何かをするんだったら、商売でもしてみたらどうなのかなって」 2.  「商売?」  七海以外の三人が、一斉に声を上げた。いきなり商売などという言葉が飛び出てきたからだ。  「商売って、どんなことするの?」口に運ぼうとしたサンドを皿に戻した拓海は、聞き返した。  「何か、いいアイデアでもあるわけ?」美咲も聞き返す。  「そういうわけじゃないけど。でも、お金が欲しい欲しいとか言っていたって、天から降ってくるわけじゃないでしょ。誰かがくれるわけでもないのだったら、自分たちで稼ぐしかないわけじゃん」  「だって、うちの学校、バイトが禁止されているんだよ」  「商売とバイトは違うと思うけどなぁ」  「どこがどう違うんだよ?」
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