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◆◇◆◇◆
佐野は何がしたいんだろう、とぼんやり考えてはみるけれど当然答えは出ない。
もうどうにでもなれとTシャツをかぶったまま佐野が作り出す振動に目を閉じた。じわじわと鳴き続ける蝉の声だけが、沈黙を貫く俺達の間に落ちる。
相変わらず、抱き方や歩き方に気遣いはみられない。優しくなんかないし、物言いも乱暴だし。
なのに、どうして俺はこいつの腕の中におとなしく居るんだろう。
「おい」
「何」
「……かったな」
「あ?」
聞き返したと同時に、キィ……と何かが甲高い音を上げて、足に冷気がぶち当たった。
ぎゅっとつま先を丸めて謎の冷気に息を飲んだ。瞬間。
「佐野ぉ!?」
聞き覚えのある声が、響いた。
ぼす、ぼす、と鈍い足音とともに誰かが近付いてくる。
「何やってんの? てか、誰、それ。どしたの」
「訳は後で説明するから、とりあえず部屋貸してくれ」
「ちょちょちょちょい待ち!」
「ああ、あと救急箱的なもんもあると助かる。じゃ、よろしく」
相手が答える前に、佐野はまたずんずんと歩いていく。
声の主は――たぶん、同じゼミの早川。大学の近くにあるネットカフェでバイトをしていると聞いたことがあるから、ここがそうだろう。
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