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俺と同じように隣に座り込み、煙草に火を点けた佐野はぷかぷかと輪っかの煙を吐き出しながら視線だけをこちらに向けてきた。
「で?」
「でって何」
「……昨日の」
「昨日?」
的を得ない佐野の物言いに、つい眉が吊りあがる。いつも行動はだらだらしつつも口だけは鋭いナイフみたいによく切れ、よく回る癖に、何なんだ今日。
次に回りくどい言い方をしたら無視してやろう、と大きく煙を肺に入れた。
その瞬間、「お前、男好きなの?」と問い掛けられ、噎せた。そらもう、見事に噎せた。
「ゲッホ、なん、んんっ、ゲホッ」
「おい、大丈夫か?」
咳の治まらない俺の背中を擦る佐野の表情は心配そのものなんだけど。何。見てたのか。見られてたのか。
視線で訴えかければ、受け止めた佐野はへらりと笑って俺の背中を擦る手はそのままに、口を開いた。
「いやな、昨夜ただならぬ雰囲気で男とラブホ入ってったからさー」
「げほっ!!」
「でも神谷には好きな奴いるから彼氏とかではないだろうなーと思って。て事はただの尻軽かなーって」
「……」
ぴたりと咳は止まり、真正面から佐野を見据えた。
何だろう、どこからつっこんだらいいんだろう、こいつ。今すぐ目の前から消し去りたいんだけど。いや、この世から消し去りたいんだけど。
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