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俺の視線など気にもならないのか俺の手から短くなった煙草を取り上げると、携帯灰皿に吸殻を入れ、次いで自分のも捻じ込んでいる。
口ではだいぶクズい事言ってんのに喫煙マナーはしっかりしてるとか何そのめんどくせえギャップ。
睨みつける俺の視線を受け取る色素の薄い瞳が、先ほどの問いかけの答えを求めている。恐れていた嫌悪感よりも、好奇心に満ちた表情に少し胸の奥がもやっとする。
こいつ、思ってたよりクズいぞ。だいぶっていうかすんごいクズいぞ。
「……別に。お前に関係ないだろ」
喉にまだ何か引っかかってる感はあったけど、無事に言葉には出来たし、小さな声でもすぐ傍に座る佐野にはしっかり届いただろう。
察してくれ、と投げやりな口調になってしまったのは状況を鑑みれば判ってくれる筈だろう。
「……ふうん」
「何だよ」
「いんや、確かに関係ねえなって」
2本目の煙草に火を点けた佐野は自分が発した言葉の無遠慮さに気付いていないのか、クックッと喉を鳴らして笑うばかりでその表情に罪悪の念は感じられない。
むしろ、楽しそうだ。すごく。
これ以上一緒に居たって不快になるだけだし、元々こいつとはそんなに仲良くはない。触れて欲しくはないところに興味本位でずかずかと踏み込んでくる奴に、何も話したくない。
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