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癖なのか、さっきと同じようにぷかぷかと輪っかの煙を吐き出す佐野に声も掛けず、立ち上がる。
『でも神谷には好きな奴いるから――』気にかかる言葉を聞いた気がするけど、こいつのことだ。どうせ当てずっぽうで言ったんだろう。気にするだけ無駄だ。
日陰から陽の下へと足を踏み出した。
「おい、神谷」
さすがの佐野でも俺の心境を察したのか、先ほどより幾分か真剣な声音で呼びかけてきた。
謝罪の言葉ひとつでもあるのなら、返事をしてやってもいいと口を閉ざしたまま、振り返った。もちろん、視線は鋭く尖らせて。
「真壁の志摩って、くっついたのか?」
「は?」
……おい、誰か。誰か鈍器持ってきてくれ。今すぐこいつの脳天かち割りたい。
そんで頭の中に問い掛けたい。「気遣いの心! 知ってますか!!」と。
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