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よく晴れた初夏のある日。
俺――神谷 悠紀(カミヤ ユウキ)は、フラれた。
「神谷のおかげだよ! ありがとう!!」
涙交じりの声で放たれた言葉に、うまく返す事ができなかった。曖昧な返事をし、こくこくと頷く俺に疑問も抱かず、目の前の男はただ手放しで喜び、礼を言い続けた。
真壁 大和(マカベ ヤマト)――中学からの親友。
こいつは、大学に入ってからずっと恋をしていた。どうせ叶わぬ恋なのだから、早々に諦めろとずっと言い聞かせてきたんだけど。
つい先日、退学だ行方不明だと散々騒ぎ立てて、落ち着いたかと思えばこれだ。
真壁が惚れたのは、男だ。真壁はもちろん、相手の志摩 聖(シマ ヒジリ)も、女が好きなストレートで。叶う筈のない恋はあっさりと成就し、幸せそうな笑顔を浮かべている。
ノンケに恋をして――それが実るのは、どれだけの確率なんだろうか。
想いを伝える勇気があるからこそ得た幸せなんだろうか。
「心配かけてごめんな、神谷」
俺には――できない。
この関係が壊れるかもしれないと、そう考えただけで足が竦む。
真壁 大和――中学からの親友で……あの日からずっと、ずっとずっと好きだった。
伝える事も出来ない俺の想いは、真壁のそれとは違い無残に砕け散った。
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