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「んな情けない顔してた?」
「うん。ずうっと」
「情けな」
「そんなことないよ」
麻広ちゃんは顔を横に振って「ごめんね」と囁き、手を離した。
何に対する謝罪なのか――問い詰める前に彼女は続けた。
「ゆうちゃんが自分から言ってくるまでは黙っていようと思ってたんだけど」
「……?」
言葉を詰まらせた彼女に続きを促すよう、こてんと首を傾げてその瞳を見つめる。でっかくて、きらきらしている目。真壁と似ているのに、全然違う、目。
「泣いても、いいんだよ」
「え?」
「私の前では……強がんなくても、いいんだよ」
ぐっと後頭部を掴まれたと思えば、胸元に顔を押し付けられた。
残念ながら麻広ちゃんのそこはつるぺたなため柔かさに顔が埋もれるという事は無かったのだけど、頬に心地よいぬくもりと穏やかな鼓動が伝わり、思わず目を閉じた。
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