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 ◆◇◆◇◆  物心ついた頃から、俺は人と少し違うのだと自覚はあった。  そして、それを口にするのはとても危険な事なのだと、幼いながらに察し心の中に留めておいた。  男が男を好き――たったそれだけで、生き辛くなる。おかしいよな。人を好きになるだけだっていうのに。 『やっぱ男は無理だわ、俺』  中学2年の夏。  自分の性癖とうまく付き合う術を身につけていた俺は、同じような性癖を持つ先輩と“そういう関係”になった。  恋とか愛とか、好きとか嫌いとか。よくわからなかったけど、俺でもいいと言ってくれる存在が嬉しくて、何でも受け入れた。  キスも、手や口でしてあげるのも、彼が気持ちいいと喜んでくれる事なら何でもやった。  だけど、いざ身体を繋げようとした時に放たれたのはその言葉。  胸も無くて、どちらかというとガリガリで骨っぽい俺の身体が、無理だと。……そんな事、最初から判ってたじゃないか。同じモンが付いてる俺がいいと言ったのは、そっちなのに。  期待させるだけさせて、彼は俺の元から去った。どんなに責めても縋っても泣いても、振り返りもせずに。 『……っ、』  放課後の教室の床は、昼間とは違ってひやりと冷たかった。夏休みの始まりのこの日、誰も居ないここが、俺の世界なのだと――ただ哀しかった。 .  
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