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こいつが何をしたいのかなんて、欠片も判らない。
だけど、ひとつだけ判る。
佐野は――俺のことが、嫌いなんだ。
感情がごちゃ混ぜになって小さく震える俺を目の前にしても、罪悪感のひとつも抱かないほどに。
絶対、こんな奴の前で泣いてなんかやるもんか。
ぐっと唇を噛み締めて後ずさる。
遅かれ早かれ、友人という関係を越えて恋人となった真壁と聖の姿は日常的に目にするようになる。それが、今だっただけだ。判っていたはずだ。大丈夫。苦しくなんか、無い。
「地雷踏み抜かれたのがそんなに悔しかったかよ」
「……」
「何されたって俺はてめえの前で馬鹿みたいに笑ってやるよガッハッハッてな!」
――『お前は、笑ってなんかない』
そう吐き捨てた瞬間の、ぎくりとした佐野の表情。あれは多分、佐野にとって地雷だったんだろう。
人としてどこか欠落した部分――誰だって持っている、隠しておきたい自分。
俺がゲイである事をひた隠しにしているのと同様に、佐野は俺が言った点がそうなんだろう。
だからって、こんな風に塞がってもいない傷を抉られて黙ってなんかいられるもんか。
胸を張って踏ん反り返って「んべ!」と舌を出して行儀悪く右手の中指をおっ立てて見せ付けた。ふぁっきゅー!!!って。
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