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両方の手のひらを広げてみれば、こけた拍子に傷付いたらしく皮が捲れ、血が滲んでいた。
もう、ボロボロだ。心も、身体も。疲れた。
――真壁を、好きでなかったら。こんな想いもしなくて良かったのかな。
「おい」
「!!」
呼び掛ける声に肩が震えた。
でも、あまりに情けないこの面を晒すわけにはいかなくて、ただ俯いて「あっちへいけ」と手を振った。
なんで、お前が来るんだ。
なんで、わざわざ追いかけてくるんだよ。
「怪我してんじゃねえか」
「……」
「転んだのか?」
「……」
問い掛けてくる声は、少しだけ息切れしていていつもより低い。
手首を掴む手が、やたらと熱い。
構うな、と手をふりほどいて頭をぶんぶんと横に振れば、重く長い息が落ちてきた。
と同時に、身体が浮いた。
「なっ!?」
「うわ、軽っ」
「な、なっ!?」
「うるせえよじっとしてろ」
抵抗する隙も与えず、佐野は俺の身体を抱えてずんずんと歩きだした。
肩に担ぐ抱き方でなく、何故か横抱き。いわゆる……いわゆる、お姫様だっこ。
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