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「おおお降ろせ! 今すぐ降ろせ!!」
「耳痛いから黙れ」
「やかましいわ早く降ろせ!」
あちこちで女子の憧れは「お姫様だっこ」と聞いてきたけれど。
やたらと背のでかい奴に、それも特別仲も良くなく何なら信用もしてないしむちゃくちゃに警戒している奴にやられたって、恐怖でしかない。
いつ落とされるのかもわからないし、俺の腰と膝裏を支える手に気遣いの欠片もない。
女子の皆さん、だっこをしてくれる男は慎重に選んでね。
「降ろせ!!」
「……」
ひと際強く言い放つと、佐野の足がビタリと止まった。
素直に降ろされ、地に足が着いてほうっと息が漏れた。
あ。膝めっちゃ血が出てる。
俯いたままごしごしと目尻を拭っていると、両掌に加え両膝まで思い切りずる剥けているのを発見した。どんくさすぎるだろう、俺。
「……?」
耳の真横で衣擦れの音が聞こえ、恐る恐る隣に立つ佐野を見上げた。
えっ何で脱いでんのお前。
「ぶっ!!」
問い掛けは、脱ぎ捨てられたTシャツを頭にかぶせられた事で、咥内に留まってしまった。
真っ黒なタンクトップ一枚になった佐野はかぶせられたTシャツを剥ぎ取ろうともがく俺をまたひょいっと抱え上げた。
瞬間、香水だか何だかわからないけど、佐野の匂いが鼻を掠めていきぶわりと鳥肌が全身を駆け抜けていく。何、この状況何!?
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