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じっとその手元を見ていると、視線に気付いたのか佐野が顔を上げた。
あ、こいつの目、ちょっと青みがかってて不思議な色してる。
「んぶっ!」
「かぶってろ」
「佐野ぉ~救急箱持って来たよ~」
またもタオルを顔に投げつけられて顔を隠された。
こいつは、俺の顔を何だと思ってるんだろうか。
カラカラとドアが開き、佐野と一言二言交わしてる早川の視線が俺に向いているのがわかる。うん、そら気になるよな。
でも結局俺が誰なのかを聞き出せないまま早川は追い出され、小さく情けない声を上げながら離れていった。
「……」
「……」
「悪かった」
「えっ、ッ!?!!!」
たっぷりの沈黙のあと、佐野は言った。
言葉の真意を問い質そうと頭のタオルを投げ捨てて身を乗り出した瞬間、思い切り消毒液を傷口にぶっかけられて悶絶した。口からは店中に響き渡る叫びが飛びだしかけていたのだけど、大きな掌が出口を塞いだために声を出す事は叶わなかった。
痛い、と視線で訴えかけても佐野の手は容赦なく反対の足にまで消毒液をぶっかけやがった。
「……泣かれるとは、思わなかったんだよ」
「んんん!?」
何が!? と叫んだのは伝わっただろうか。
佐野の眉尻が情けなく下がって、口から手が外された。
「泣かせるつもりは無かった。悪い」
「……」
ちら、と上目遣いで俺の様子を窺って、佐野は手を取ってきた。
傷と埃と砂利に塗れた、俺の手のひら。
ボロボロで汚いそれに躊躇なく触れて、汚れを落としては消毒していく。
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