color3:Mint

13/25

470人が本棚に入れています
本棚に追加
/152ページ
 ……ていうかチョコミン党って何だ。初めて聞いたわ。 「美味いの、それ」 「食ったことねえの!?」 「……匂いが、苦手なんだよ」  真壁の前では言えなかった本音が、つるりと口から飛び出た。  食い物ひとつで嫌われるだなんて思っても無かったが、真壁の好きなものを否定することは、したくはなかったんだ。  たぶん、いや絶対、真壁も佐野の言う――チョコミン党だから。  一口分のアイスを掬い、溶けかけのそれをじっと見つめた。   「神谷」 「あ?」  んっ?  咥内に、甘いチョコとミントの香りが漂う。  相変わらず匂いは苦手だけど味は、嫌いじゃないかも知れない。  ……味? 「ッ!?」  どん、と異常なほどに近付いていた佐野の胸元を押しやれば、持っていたアイスとスプーンがぼとりと落ちた。  手を汚し、安っぽいポリエステルのソファにどろりと広がっていくけれど、それどころじゃない。こいつ今、 「な、な、」 「バニラあま」  ごしごしと唇を拭うけれど、咥内のチョコミントの匂いがいなくなってくれない。  忙しなく視線を泳がせる俺を覗き込み、佐野は吹き出した。 「キスひとつで大慌てとか、童貞かよ」と罵りながら。 .
/152ページ

最初のコメントを投稿しよう!

470人が本棚に入れています
本棚に追加