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……ていうかチョコミン党って何だ。初めて聞いたわ。
「美味いの、それ」
「食ったことねえの!?」
「……匂いが、苦手なんだよ」
真壁の前では言えなかった本音が、つるりと口から飛び出た。
食い物ひとつで嫌われるだなんて思っても無かったが、真壁の好きなものを否定することは、したくはなかったんだ。
たぶん、いや絶対、真壁も佐野の言う――チョコミン党だから。
一口分のアイスを掬い、溶けかけのそれをじっと見つめた。
「神谷」
「あ?」
んっ?
咥内に、甘いチョコとミントの香りが漂う。
相変わらず匂いは苦手だけど味は、嫌いじゃないかも知れない。
……味?
「ッ!?」
どん、と異常なほどに近付いていた佐野の胸元を押しやれば、持っていたアイスとスプーンがぼとりと落ちた。
手を汚し、安っぽいポリエステルのソファにどろりと広がっていくけれど、それどころじゃない。こいつ今、
「な、な、」
「バニラあま」
ごしごしと唇を拭うけれど、咥内のチョコミントの匂いがいなくなってくれない。
忙しなく視線を泳がせる俺を覗き込み、佐野は吹き出した。
「キスひとつで大慌てとか、童貞かよ」と罵りながら。
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