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「童貞じゃねえ!」 「あっそ」  落ちたカップを拾い上げながらくつくつと笑う佐野は、絶対信じてない。  いや信じてないっていうかまあ真実なんだけどいや経験が無いってわけじゃないんだよただ童貞っていうか、いやいや何言ってんの俺。  ていうか、今そんなのどうでもいいだろ。問題はこいつの行動だ。 「何で、」 「チョコミント気になったんだろ?」 「はっ?」 「美味しいのかって聞いたじゃん」  素っ頓狂な声が出た。こいつ馬鹿なの?  味見をキスでってどこの少女漫画だよ。そんなのされて喜ぶの頭に芋けんぴ着けてる女の子だけじゃねえの。 「だからって、ひっ」  手首を取られたかと思えば、でろでろに溶けたアイスを佐野の舌が舐め取っていく。  やめろと抵抗しても俺よりも体格のいい佐野に力では勝てないうえに、おかしいとその表情が楽しそうに歪んだ。  ネットで見た頭に芋けんぴつけた女の子が照れくさそうにしている顔を思い出してる場合じゃない。    佐野が何を考えてるのか、判らない。  背けた俺の顎を取ると力任せに佐野の方を向かせられた。真正面から、青い目が俺を見据えている。  何の感情も抱いていない、冷たくて暗い瞳。  ――怖い。 「ン、ッ!?」  抵抗する間も無く唇を塞がれたと思えば、ぬるりと舌が歯列をなぞっていく。  噛み締めた歯をこじ開けるように、何度も何度も、ゆっくりと。 .
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