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真壁が好きだ――これまで、平然と飲み込んできたその想いは、今夜ばかりは何をしても誤魔化す事が出来ず、心を支配していた。
どれだけ酒を飲んでも、頭がふわふわご機嫌にはなるものの、どこか冷静な自分がこの現状を嘲笑っている。酒に縋れない事が、こんなにも苦痛なのかと、正直驚いた。
酔いたい。楽しくない。笑うな。俺を、嗤うな。……触るな。
「や、めろ」
「えっ」
服を脱ぎ捨て、裸で触れ合う――何度も繰り返してきた事だ。
なのに、今日に限ってそれが嫌で嫌で、仕方が無かった。胸が苦しくなるほどの嫌悪感が、じわじわと湧きあがってくる。
「……悪い、今日、無理っぽい」
「ええ、今更かよー」
「悪い」
伸し掛かっていた胸を押し返すと、ユウは眉尻を下げて「そういう時もある」と笑った。
素っ裸で寸止め。かっこ悪い事この上ない。けれど、さして気にした様子もないユウはいそいそと着替えを始めていた。
身体だけの繋がりの男同士という気軽さと、だからこそわかる不調時の精神的苦痛。女の子が相手ではわかってはもらえないのだと、大学の誰かが言っていた。
「不能!」となじられたとえらくへこんでいて、女の子は恐ろしいなあと。いや、世の女の子が全員そうとは思わないけど、いざという時にそんな風に言われたんじゃ勃つモンも勃たないわ。しょげる一方だよ。
実際、言われた奴はこのままキノコでも生えてくるんじゃないかというくらいうじうじじめじめへこみまくっていた。股間のキノコはしょぼいしな――と脳内で続けそうになって慌てて掻き消す。なんて低俗なオヤジギャグだろうか。
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