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「神谷?」  悶々とひとり考えこんでいた俺を、既に着替えを済ませたユウが見下ろしていた。  慌てて返事をすると、人懐こい笑みを浮かべてひらひらと手を振ってきた。 「俺帰るけどいいだろ?」 「うん。ああ、支払いはいい、俺がやっとく」  ぱっと嬉しそうに「いいのか」と尋ねてくるユウに頷けば、スキップしそうな勢いで部屋を出て行った。あの様子だと、また新しい奴を引っ掛けて次のホテルに行くだろう。  今日出来なかったのは俺の所為だし。次の分の軍資金くらいは残してやらないと。  ベッド近くのデジタル時計に視線をやれば、12:00を刻んだ所。羽を伸ばしたい盛りの歳の俺達には、夜更けというにはまだまだ早い時間だ。 「……ねむ」  だけど、今日の睡魔はやたらと強い。  こんな時間に眠たくなることなんて、そうそうないのだけど。うつらうつらと閉じたがる瞼に素直に従い、素っ裸のまま布団を被った。  ――宿泊にしておいて良かった。  小さな呟きは、口をついて出ただろうか。それとも、咥内で押し留まったろうか。  わからないまま強力な睡魔に降伏し、意識を手放した。 .
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