嘘つきで狡い人

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「……退いて、下さい……っ」 「聞こえないよ」 嘘つき。 聞こえてるくせに。 「さ、くら…先生…っ」 「ひとつ、いい事を教えてあげる」 そう言って、するりと私の首筋を撫でる指先に背筋がぞくりと震えた。 「本当に嫌なら、相手の名前は呼ばないことだよ……如月さん」 首筋を撫でる指先が私のネクタイを緩めたその瞬間ーーーー…。 「っ~~~!!」 ガリッと痛々しい音とともに、痺れるようにじわりと広がる甘い熱。 あまりの出来事で咄嗟に先生の肩口に顔を埋めて、彼の身を包む白衣を握った。 熱い、アツイ、熱い。 ドクドクと暴れる心臓と、ジンジンと痛む首筋に思考回路はショート寸前。 噛まれたっ…。 それだけが頭を埋め尽くしていく。
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