第壱章

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「あ、はい。」 反射的にそう答えて初めて気づく。 もしかして先輩は緊張を消そうとしてくれたんじゃないのか、と。 「そっか、よかった。」 そう言いまた笑うその顔は安心させる。しかし一変、困り顔になる。 「でも、残念なお知らせ。 疾風の言ったことは嘘なんかじゃないよ。 ここは正真正銘、妖のための学校。 人間の詩葉ちゃんがいるのはおかしいんだ。」 困り顔してどんなこというのかと思えば、やはり彼は相当大きな爆弾を落とした。 「な…先輩までそんなこというんですか…」 玲先輩だったら違うよ、ってそう言ってくれるかと思った。 だけど二人がそんなこというなんて、信憑性がますます上がってしまう。ありえないことだけど、現実なのかもと思っている自分が心のどこかにいる。 確かな証拠がないからいまいち信じきれない。 「うん。ごめんね、君の望む答を与えてあげられなくて。」 謝られることが正しいのか正しくないのかもよくわからなくなってきた。 それでも玲が困り笑顔を浮かべているのは詩葉としては申し訳がない。だから黙って首を振る。 「それから証拠がないと信じられないって思ってるんじゃないかと思うんだけど、どう?」 「それは…」 是非とも出して欲しい。目に見える形で何かがあるなら、それを示してもらえればはっきりするはず。 でもそれを見てしまうことは、何か後戻りできなくなるようなそんな風に思われてしまう。 だから明確に見せてくださいとは言えない。 それを受けて玲は疾風へ目配せする。 「疾風。ちょっとだけ、本性見せてあげて。」 「はぁ!?何で見せないといけないんだ。」 瞠目している姿は嫌がっているように見える。 それでも例え疾風が嫌がろうと詩葉は見なければ、目をそらすわけにはいかないから譲歩はしない。 「この子のため。お前が連れてきたんだから。それに俺じゃ何も分からないだろ。 疾風だと一目瞭然でいいじゃん。 これもお前の責任。」 そう言われた彼は玲と見つめあっていたが、暫くして「わかったよ。」と折れた。玲は満足げに頷く。 すると何を思ったのか疾風はシャツを脱ぎ始めた。 「ちょっ…なんで服脱いでるの!?」 「まあ見てなって。」 突然のことに動揺する詩葉を尻目に見ているよう促す。
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