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五月の初旬、私立鵜野高校の廊下にはザワザワという声が響いていた。
明後日は年に一度の学園祭。生徒たちは最後の追い込みをさせられていた。
そのうちの一つ、看板を塗っていた少年がハケをペッと降ると勢い余ってか左袖に緑色がついてしまった
「やっべペンキやっちまった……」
「あーあ、何やってんだ。あっ、七瀬(ななせ)!ちょうどいいところに!」
ちょうど階段口を曲がってきた七瀬と呼ばれた少年は彼らにとことこと近寄る。
「はいはい、なんかあった?」
「コイツがここにペンキつけちまってさ。お前の異能でなんとかなんねぇ?」
「んー、ペンキの色を消せばいい?それともこのペンキを背景と同じ色にすればいい?個人的には後者の方が楽なんだけど」
「じゃそっちで」
りょかー、と言うと七瀬はそのインクをじっと見る。
そしてインクの縁をなぞり、手を被せ目を閉じ、集中して一呼吸おくとそこからインクは消えていた。
「こんな感じでいい?」
「スマン助かるわ。オメーも次はやんなよ?七瀬いなかったら色々めんどくさかったんだからな」
「わーってるって、七瀬。サンキュ」
「いいーっていいーって。役に立てたなら何よ。それに臭いまではとれないんだし」
「きゃっ!」
そうして三人が笑っていると蹴飛ばされたペンキ缶の中身が飛んでくる。
ばしゃあと派手に宙を舞う赤色のペンキ。
「無色に!」
反射的に七瀬は叫んで目を閉じ手をペンキに向けて突き出す。
すると赤色のペンキが消えて、一瞬後にバシャンという水のような音がした。看板には変化がない。
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