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兄は、本当はシェフになりたかったんだけど、大きな病気をして、手術も受けたので体力的に無理だ。
今は、父の残したビルの中に有るレストランのオーナーになり、厨房に立つ事は無いんだ。
家では時々料理を作るけどね。
ビルの中に有る輸入雑貨の店などは、僕がやっている。
お姉さんは、経理を担当してくれているんだ。
とは言え、僕は、この春大学生になる身だから、殆ど兄夫婦がやってくれているけれど。
そして3月…
店の仕入れも終わったし、僕は友達と、まだ雪の残る北海道に釣りに行く事にしたんだ。
【北海道 車の中】
CDをかけた。
マーラーの巨人。
運転するのは、友人の慎二。
道は、どこまでも真っ直ぐだ。
「動物が飛び出して来るから、ひかないように気をつけて」
「わかってるよ。お前は本当に動物が好きだな。小学校の頃、動物のフィギュア集めてたよな。シマウマとかさ」
「良く覚えてるな」
一番好きなのは、ペガサスとユニコーンだった。
あれは幻獣?
今でも持ってる。
ミニカーも集めてた。
あの頃は、早く大人になって車を運転したいと思っていたけど、今は目が悪いので、車の運転はあまり好きではないんだ。
慎二が車を止めた。
「ほら、見ろよ。キタキツネだ」
「どれ?」
「メガネ無いのか?」
残念…何と無くしか見えない。
「待っててやるからな、ゆっくり渡れよ」
キタキツネが、車の前を渡る。
【釣具屋】
僕と慎二は、釣具屋で車を降りた。
店に入ろうとすると、高校生ぐらいの女の子が話しかけてきた。
「お兄さん達。沢に入るの?」
「そうだよ」
「だったら、熊除けの鈴忘れないで」
そうか、熊が出るんだ。
「この店でも売ってるから」
「忠告ありがとう」
女の子は、一緒に店に入って来た。
「ほら、この鈴」
本当に売ってた。
僕達は、ラインや餌などと一緒に、熊除けの鈴を買った。
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