第1章 初めての北海道

3/6
前へ
/182ページ
次へ
兄は、本当はシェフになりたかったんだけど、大きな病気をして、手術も受けたので体力的に無理だ。 今は、父の残したビルの中に有るレストランのオーナーになり、厨房に立つ事は無いんだ。 家では時々料理を作るけどね。 ビルの中に有る輸入雑貨の店などは、僕がやっている。 お姉さんは、経理を担当してくれているんだ。 とは言え、僕は、この春大学生になる身だから、殆ど兄夫婦がやってくれているけれど。 そして3月… 店の仕入れも終わったし、僕は友達と、まだ雪の残る北海道に釣りに行く事にしたんだ。 【北海道 車の中】 CDをかけた。 マーラーの巨人。 運転するのは、友人の慎二。 道は、どこまでも真っ直ぐだ。 「動物が飛び出して来るから、ひかないように気をつけて」 「わかってるよ。お前は本当に動物が好きだな。小学校の頃、動物のフィギュア集めてたよな。シマウマとかさ」 「良く覚えてるな」 一番好きなのは、ペガサスとユニコーンだった。 あれは幻獣? 今でも持ってる。 ミニカーも集めてた。 あの頃は、早く大人になって車を運転したいと思っていたけど、今は目が悪いので、車の運転はあまり好きではないんだ。 慎二が車を止めた。 「ほら、見ろよ。キタキツネだ」 「どれ?」 「メガネ無いのか?」 残念…何と無くしか見えない。 「待っててやるからな、ゆっくり渡れよ」 キタキツネが、車の前を渡る。 【釣具屋】 僕と慎二は、釣具屋で車を降りた。 店に入ろうとすると、高校生ぐらいの女の子が話しかけてきた。 「お兄さん達。沢に入るの?」 「そうだよ」 「だったら、熊除けの鈴忘れないで」 そうか、熊が出るんだ。 「この店でも売ってるから」 「忠告ありがとう」 女の子は、一緒に店に入って来た。 「ほら、この鈴」 本当に売ってた。 僕達は、ラインや餌などと一緒に、熊除けの鈴を買った。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加