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「沢に入るのは、明日にした方が良いよ。朝早く入って、暗くならないうちに戻った方が良いから」
「じゃあ、今日は、どこか泊まる所を探そう」
と、言っても…
この辺りにはホテルは無いな。
その子は、熊が出るので、やたらな所でキャンプをするのも危険だと教えてくれた。
【車の中】
僕達は、車で泊まれそうな所を探す事にした。
少し走ると、携帯が鳴った。
「兄貴?うん、うん、え?親父が?うん、わかった」
「お兄さん、何だって?」
「慎二悪い。この近くに春風牧場って有るか探してくれないかな?」
「オッケー」
ナビで探して牧場に向かう。
「牧場って牛か?」
「聞いてなかった」
その牧場は、割と近くに有った。
馬だな…競走馬の牧場か?
あの父が、牧場を買っていたなんて…
ギャンブルをする奴は勘当だ!といつも言っていた。
テレビで、チャンネルを変えた時、少し馬が映っただけでも怒っていたのに…
牧場を買ったなんて、信じられない。
そんな父だから、僕は、初めて競馬のゲームを買った時も、何か悪い事をしているようで、中々手が出なかったんだ。
兄が、とにかく確かめて来いと言うので、牧場に行ってみる事にした。
【春風牧場】
「あんたら、何しに来た?うちは、見学お断りだー」
お爺さんは、いきなりそう言った。
「あの、そうじゃなくて、東京から来た」
そして、僕の言葉を最後まで聞かず…
「うちは、見ての通り家族でやってる小さな牧場だー。牧夫の募集はしてないよー」
「東京もんなんて、使い物になんないしな」
と、若い男の人が言った。
「そうじゃないんです。僕、葉月菱(はづきりょう)と言います。この牧場を父が買い取ったと聞いて来たのですが」
「葉月だって?お前、葉月社長の息子か?!」
「そうですけど」
「こいつ、この牧場売るつもりか?!爺ちゃん、帰ってもらえ」
その人は、凄い剣幕で怒鳴った。
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