第1章 初めての北海道

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「沢に入るのは、明日にした方が良いよ。朝早く入って、暗くならないうちに戻った方が良いから」 「じゃあ、今日は、どこか泊まる所を探そう」 と、言っても… この辺りにはホテルは無いな。 その子は、熊が出るので、やたらな所でキャンプをするのも危険だと教えてくれた。 【車の中】 僕達は、車で泊まれそうな所を探す事にした。 少し走ると、携帯が鳴った。 「兄貴?うん、うん、え?親父が?うん、わかった」 「お兄さん、何だって?」 「慎二悪い。この近くに春風牧場って有るか探してくれないかな?」 「オッケー」 ナビで探して牧場に向かう。 「牧場って牛か?」 「聞いてなかった」 その牧場は、割と近くに有った。 馬だな…競走馬の牧場か? あの父が、牧場を買っていたなんて… ギャンブルをする奴は勘当だ!といつも言っていた。 テレビで、チャンネルを変えた時、少し馬が映っただけでも怒っていたのに… 牧場を買ったなんて、信じられない。 そんな父だから、僕は、初めて競馬のゲームを買った時も、何か悪い事をしているようで、中々手が出なかったんだ。 兄が、とにかく確かめて来いと言うので、牧場に行ってみる事にした。 【春風牧場】 「あんたら、何しに来た?うちは、見学お断りだー」 お爺さんは、いきなりそう言った。 「あの、そうじゃなくて、東京から来た」 そして、僕の言葉を最後まで聞かず… 「うちは、見ての通り家族でやってる小さな牧場だー。牧夫の募集はしてないよー」 「東京もんなんて、使い物になんないしな」 と、若い男の人が言った。 「そうじゃないんです。僕、葉月菱(はづきりょう)と言います。この牧場を父が買い取ったと聞いて来たのですが」 「葉月だって?お前、葉月社長の息子か?!」 「そうですけど」 「こいつ、この牧場売るつもりか?!爺ちゃん、帰ってもらえ」 その人は、凄い剣幕で怒鳴った。
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