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「葉月社長は、いつまで居たって良い、って言ってたのになー」
「今に買い戻してやるからな、待ってろ!」
「あんた達、何怒鳴り散らしてるのー?」
「婆ちゃん。葉月社長の息子が来やがった」
「とにかく入ってもらったらー?」
【春風家の客間】
お婆さんは、僕の話しを聞いてくれて、父がこの牧場を買った経緯を教えてくれた。
お婆さんの名前は、春風弥生さん。
お爺さんは長次さんで、あの怒鳴っていた男の人は、お孫さんの駿さんだそうだ。
牧場が経営難になり、人伝てに父を紹介されたらしい。
牧場を担保に借金を申し込み、父がそれに応じたと弥生さんは話してくれた。
「いつまで居ても良いんですよね?」
牧場のお母さんさつきさんにそう聞かれ、僕は兄に電話した。
「その牧場はお前の物だ、好きにしろ。赤字だからな、俺は手放した方が良いと思うが」
好きにしろ、って言われても…
取り敢えず、ここは僕の物になった事を、弥生さんとさつきさんに話した。
「そうかい?それで、私達はどうなるのかねー?」
このお婆さん達をここから追い出したら、どこに行く所が有るんだろう?
「ここに居ても良いんだよね?」
そう言われて僕は…
「何とか牧場を続けられるように、考えてみます」
そう言った。
とにかく今日は、ここに泊まって行きなさいと言って下さったので、そうさせてもらう事にしたんだ。
「お腹すいたでしょう?さあさ、ジンギスカン食べて」
さつきさんは、僕達にジンギスカンを勧めてくれた。
羊の肉…
子羊は、良く食べるけど…
食べてみると、意外と美味しかった。
次の日、僕達は5時に起きて釣りに出かけた。
さつきさんが、お弁当を持たせてくれたんだ。
僕達は、熊除けの鈴をつけて沢に入った。
【渓流】
僕と慎二は、上流目指して、道なき道を進む。
本当に、熊が出そうだ。
食べ物を持って入ると危険なので、朝食は車内で済ませ、後は車に置いて来た。
元々彼ら自然界の動物たちの住む場所に入らせてもらっているのだから…
腰にぶら下げた熊除けの鈴が鳴る。
魚の居そうな場所を見つけて、僕達は、釣りを始めた。
毛針でイワナを狙う。
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