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「山田さん、惣菜盛り付け作業終わりました。サンドイッチラインの人手が足りないそうなのでヘルプに回ります。それと先程山田さんが検品されましたシャケおにぎりの発注数ですが多少誤差がありましたので私が処理しておきました」
「そ、そう、助かるわ」
私はすっかり工場勤めが板についていた。
むしろすでにベテランの風格を出していたと自分でも思う。
「それと、作業中に口を動かして周りとコミュニケーションを取るのは勝手ですが、同時に手も動かして下さい。作業に支障をきたします」
「な、なんでアンタにそこまで……!」
「言いたい事は遠慮なく言って欲しいと言ってくれたのは山田さんです。私はそれに従っているまでです」
山田先輩はもはや何も言えず、ただ唯一見える切れ長の目を泳がせるしかなかった。
その堂々とした私の態度を見て、次第に私に味方する従業員も増えていく。やがて山田先輩は、周りから孤立していき、すっかり影を潜めてしまった。
全く、張り合いの無いお局さんね。あの頃の勢いは何処へ行ったのやら。
また新人が入ったらはけ口にする気かしら。そんな事私がさせないけど。
やがて私は努力を買われ、必然的に班長に抜擢された。
先輩はすっかり以前より大人しくなったが、それもほんの束の間の事だった。
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