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「ごめんな……。俺が雪山に行きたいなんて馬鹿な事を言い出したばかりに……」
愚痴や文句のひとつを言ってもいいものを、彼女はちっとも不満や不安を表に出さず、満面の笑みを俺に向けた。
「ううん。貴方と一緒なら例え深い雪の中でも厚く閉ざされた氷の中でも平気よ」
首を傾け、僕の肩に乗せる彼女。
「寒くないかい?」
「だいじょぶ。こうして貴方にくっついていれば、寒くない。むしろ、あったかい……」
すると一安心したのか、俺の瞼が途端に下がり始めてくる。
「……ごめん。なんだか、眠くなってきた」
「えっ」
「少し、眠らせて、く……れ……」
瞼が完全にくっつき、俺の意識は深く深く沈んでいく。
闇の中、俺を呼び覚まさんとばかりに彼女の嬌声が届いた。
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