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ミルクは珈琲の色が見えなくなるくらいまで、角砂糖は三つ。
私が住む家の家主である鶴崎は、その強面に似合わず極度の甘党だった。
「はい、いつものどうぞ。」
「ああ、サンキュ」
鶴崎の家はとても広い。
一人で住むには広すぎて、もしかして誰かと暮らしていたの?と聞けば、彼は静かにうなずいた。
あんまりにも泣きそうに唇をかみしめて微笑むものだから、それ以上は聞けずじまいだ。
なんでも歌手をしているらしい。
時々ギターをかき鳴らしているときがあって、その時間が私は一番好きだ。
鶴崎は見た目に似合わず繊細な手つきで弦を弾き、とろけるような甘い声でラブソングを歌う。
「鶴の歌は素敵ね。私、大好きよ」
そういえば、彼は長い前髪を揺らして少し微笑む。
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