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「なに怒ってんだよ?」と、冗談の続きみたいな軽い口調でヒロムは言う。
そうだ、私たちは、喧嘩なんかしたことない。
だから、きっと、こんな状況に二人して慣れてない。続かない緊張感はそのせいだ。
「わかってよ」
「何を」
「察してよ」
そう言ったら、「わかんねーよ」と、少し間を置いて呟いた。
わかんない。
じゃなくて、考えたことないんじゃないの。
わかろうなんて、思ったことないんじゃないの。
そこで、ヒロムの携帯が鳴動した。
音が止んで、カーソルを動かしているのか、キーボタンを指で押す音が聞こえた。
「機嫌悪いなら、帰る」
そんなに簡単に言わないでと思ったのに、口に出せなかった。
ベッドから顔も出せないままでいると、ドアの開閉音だけ静かに響いた。
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