1.あの子の名前

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バイト復帰した日は、彼が休みで会えなかった。 すっかり、店内はクリスマスの装飾がされていて、ツリーもチカチカ気分を明るくする。 もうすぐクリスマスか。 いい加減、仲直りしないとなとヒロムの顔を思い浮かべた。 バイトの仲間は、「クリスマス、バイトの人」なんて言って、寂しい仲間を探してた。 じゃあイブのバイトが終わったあと、みんなで遊ぼうなんて約束を交わしてて、寂しいくせに、楽しんでる振りをしてるみたいだった。 時間が21時を回る頃、制服姿のヒロムが店に来た。 調理室の扉を開けると、レジにいた私に「具合、大丈夫か?」と、声をかけた。 こんなに連絡をとらなかったことが、緊張感を紡ぎ出して、「うん」と、頷くだけで、精一杯だった。 ヒロムは 「今日、一緒帰れる?」と、唐突に言った。 「え?」 「一緒、帰れたらと思ってさ」 「大丈夫」 声が上ずりそうになり、咳払いをして誤魔化した。 休憩室で待てばいいのに、近くのコンビニで待ってると、ヒロムはすぐに出て行った。 なんだ、良かった。前と変わらない。怒っていないんだって、私はただ安心した。
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