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「お疲れ」
「お疲れ」
「さっきはありがとう」と言うと、「ん?」って変な顔をする。
「メープルチュロス」
「ああ。良かったな。残っててさ」
ヒロムは他人事のように言って笑うと、更衣室へと向かって行った。
彼は、ここメープルで調理場を担当しているバイトの男の子。
私と同じ17歳の高校生だ。
そして、私が初めて付き合った彼氏でもある。
制服の上に学校指定のPコートを羽織る。それから、ヒロムと駅まで歩いて帰る。
何も言わないけど、バイトのあがり時間が重なったときの無言の約束みたいなものだ。
裏口から外に出ると、白い息が夜に溶け込んだ。
分かりやすい寒さは、体の芯まで伝わる。
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