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ナナセは自分の席に着くと、頭を抱えてため息を吐いた。
仕事中は私情を挟んではいけないと分かっていながらも、それでも嫉妬のような羨望の感情が渦巻いている。
クレアは自分にとって天使だと思った。
可愛くて優しくて、穢れを知らない無垢な存在で、自分が護ってやらなければと思い今日まで頑張ってきた。
他の人もクレアに引かれるのは当然だと思うけれど、でもどこかジュンだけは違うと思っていたというより信じていたが、それは自分の思い込みだと知らされた。
なぜジュンが自分のことを何度も食事に誘ってくれたのか疑問だったが、クレアの話を聞きたかったのかと思えば合点がいくし、そのクレアもジュンを名指しで指命したところを見ると、クレアの方も満更ではないのだろう。
「お加減が優れませんか?」
声をかけられ、顔を上げるとフライトアテンダントが心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫です」
何とか笑顔を作って答えると、間もなく到着するので席から離れないようにと言い残して足早に去っていくのを見送ると着陸に備えてシートベルトをし、シートに深く座りながらそろそろ潮時かもしれないと心の中で呟いた。
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