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『すみません、私の勝手な都合です。個人的にお会いするのは止めましょう』
ナナセからの返信を見て、ジュンは目の前が真っ暗になったような感覚を覚えた。
全くもって意味が分からないし、突然突き放されても、はいそうですかと従えるはずもない。
ジュンは一度目を閉じて一呼吸置き、よし!と気合いを入れるとナナセに電話をかけた。
もう会わないと言っている相手が出てくれる可能性はかなり低かったが、少しでも話がしたかった。
『…もしもし』
数回のコールの後、幾分かトーンの落ちたナナセの声が届いた。
「もしもし、ジュンです。ナナセさん、単刀直入に聞きます。あのメールはどういうことですか?」
『そのままの意味です。お誘いは嬉しいですけど、もうお会いするのは…』
「どうしてですか?」
『え?』
「理由を教えてください。僕が納得できる理由でなければ、受け入れられません」
キッパリ言い切ると、電話の向こうのナナセが暗い顔をしているように感じた。
「ナナセさん」
答えを促すと、躊躇いがちに言葉を選ぶように静かに声が返ってきた。
『私が…ジュンくんの側に居るのが辛いんです』
「僕が何か嫌なことしました?それなら謝ります」
『違います、ジュンくんは何も悪くないです。私がいけないんです。本当にごめんなさい』
それだけ言うと、ジュンの制止を振りきりナナセから電話を切った。
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