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「あの本って難しいから、こっちにしちゃった」
私が勧めた本を難しいと言い放ったのは新人魔女。彼女の頭はいい、と私は思っている。私が勧めたのは、「いちばん読みやすくてわかりやすい本」だった。
「○○についてはわかりやすかったわ」
私は、彼女には分からないことがあったとしても、それは体感することや実証することができないことだろう事物に限られると思っていた。だから、彼女が難しいと思ったことに驚いてしまった。私は本が大好きなので、ストーリーテリングや、ブックカウンセラーもできると思っているが、自信が粉々に砕け散っていくのを感じた。
「私は簡単だと思ったのだけれど、あなたがそれを難しいと言うのならば、もしかしたら、私は分かっているようで分かっていないのかもしれない。もう、よくわからないわ」
あわてて、新人魔女はフォローに入ってくれたが、私はそれよりもずっと、何が事実なのか知りたかった。本に向き合うためにも、それは私にとってずっと大事だった。だが、それも、数ヶ月のたうちまわった。あげく、ひとと自分の異文化を知ることにもなった。文章からはじまったのに、現実でも心の勉強をすることになった。
とんでもない遠回りを繰り広げている。仕上げるはずだった「サンキューボックス」も、プロットをしあげ、起承転結の「承」の部分に差し掛かった画面のまま、パソコンは閉じられたままだった。
そんな折、恒例のMちゃんからの電話がはいる。
Mちゃんはギャグな話を一方的にして、笑い転げて、これだけを話したかったのよ、じゃあね、と言った。それでも、なんとなく会話が続き、考えたことをたくさん話した。私は「思考」というモンスターに囚われているので、二日もあれば、結果物はたまる。
「オール読物」にあった音楽とのコラボ、ユリイカの絶賛からはじまり、アロワナとカエルの恋の話を教えた。彼女も読書が好きだからだ。
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