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「そのね、サカナクションのミュージック、メロディや歌詞も含めてね、"ユリイカ"をソースとして仕上げた作品が最高だったのよ」
サカナクションの「ユリイカ」の世界観への、トリュビュートストーリー。赤いヒールの女を描いた「ユリイカA 行成薫作」と、さえない営業マンを描いた「ユリイカB 千早茜作」。
特に、ユリイカAのレトリックには、興奮を抑えることができず、分かりもしないだろう長男に、その素晴らしさを伝えた。ユリイカBの主人公があまりも冴えないので、むかついてしまったが、局面局面を経てのラストに納得した。
どちらの作品も、ユリイカのミュージックワールドをしっかりと表現し、その味わいをすらも、海綿からじとっと蜜があふれるように、しっかりと詰め込まれていた。胸の高鳴りが抑えられなかった。
対談では、歌詞を作るときのこだわりと、2作品に込められたメタファーの本質が一致していることを確認しながら、ファンの話になっていった。サカナクションの山口によると、彼らのファン層は30代文学好きが多く、10代の若い世代には「隠喩」が通じないらしい。それを、薄く嘆いていた。
「バッハの旋律を夜中に聴いたせいです」
の言葉から起こる、味わい、意味、背景を想像する力がないのだそうだ。その言葉を目で追ったとき、普段精読と速読の中間で文字を流すように読む私がときをとめてしまった。そして、数行読み進めた後、またさかのぼって、その言葉を三度も読み返した。
隠喩を楽しむ力がない、、、、
私の言葉への一番の快楽は、そこなのに、、、
その世界が分からないってどういうことだろう、、、
「でもね、行成さんと千早さんの作品が最高だと思ったのは、私と生まれ年が同じだからじゃないかって。ホラ、あの本を難しいって言う新人魔女は、私たちよりもずっと年下じゃない?Mちゃんも、私の世代なのだから、きっといいと思うよ
時間を駆使したレトリックも素敵だったし、歌詞がすべて、センスが磨かれた言葉の装飾で小説にしたてあげられ最高な味わいがでてるのよ」
それを聞いたMちゃんは、アイアンさんはスタバで本を読んでも許してあげるわ、とてもおしゃれね、と言った。私は、スタバは甘い飲み物しかない、だいたいトールってなによ、などとクレームをつけた。
「そうなのよ、みんな、雰囲気でしかないの。だけど、アイアンさんは本物だから許してあげる」
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