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「ちがうのよ。多くの人にとって手に入りやすいブランドがヴィトンなのよ。持っていれば安心するっていうか。私もヴィトンがおしゃれだとは思わない。だけど、ヴィトンをおしゃれだと思って買っているんじゃなくて、ヴィトンを持っている自分がいいなってかんじ、を買っているのよ」
……スタバで本を読むひとも?
「そう」
本を読みたいから読んでるんじゃないの?
「そうかもしれないけど、アイアンさんほどではないわ」
え!!えええ!!??
あと、外側に見えるものをたとえることはできても、自分の心の内側に沸き起こる情感をたとえることはできないひとが多いという話にもなった。だから、詩が廃れていくのだと、息を呑みながら理解した。
だけど、驚きをどう表現していいか言葉が見つからず、ほかの小説の話をした。
・・・
じゃあ、私は内側にどれだけ情感をひろげてくれるか、っていう作品がすきなのね?あと、面白かったのは、アロワナとカエルの恋の話よ。ああいう作品が私は好きだし、ああいう作品を作ってもいいというなら、ああいう作品がいいわ
「なに、その変な話」
冒頭と終末に、廃校となった小学校のプールから女性の水死体があがった新聞記事が太字で書かれている。記事にサンドイッチされる、カエルとアロワナのラブストーリー。
カエルの生い立ちやアロワナの生い立ちやその姿。起きた出来事を追っていくと、殺人事件で何があったを想像する読み手のよりどころになることがわかる。
○カエルが人間にいじめられるシーン。仲良くしていたわけではないけれどもつながりがあったカエルが死んだりもした。被害者女性が、根暗でいじめられていた人生を暗喩したものである。
○外来種であるアロワナをトルコの宮殿にあるよろいみたいだとカエルは言う。うまれてはじめて、他者から興味をもたれたカエル。あだ名までつけられた。被害者女性が、外人かどうかは分からないが美男子にかかわりをもたれて、の隠喩。
といった具合に、比喩を探すゲームをするように読める。そのおもしろさを雄弁に語ったら、Mちゃんはまるでジブリ映画の解説を読んでいるみたいだ、と言った。解説を読まないと分からないこともある、とも言った。何を象徴としているのかが、アイアンさんには分かるからおもしろいのよ、と。
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