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綾姫さまは、大事に育てられ不思議な力で中川家を支えた。
その不思議な力というのは、主が戦(いくさ)で大怪我をした時に綾姫さまが手をかざすと傷が癒えたり、敵の大将の居場所を言い当てたり、宝が埋まっていることを当てるだのと云った力があった。
お陰で中川家は村一番の財力を持った権力者になった。しかし、問題が生まれた。中川家には跡取りの男の子がいないことだ。女子が家督を継ぐことも出来るが、出来れば男子に自分の跡を継いで貰いたいと考えていた。
綾姫さまと結婚させ婿を迎えようかとも考えたが、綾姫さまの風貌を受け入れてくれる者がいるのかどうか不安になり取り止めたそうな。というのも、この家に仕える者が綾姫さまのことを影では鬼の子やら化け物と囁き、村人達に虐められておったからだ。考えに考えた末が甥っ子を養子に迎えることだった。
その事を妻に伝え、甥っ子の正吾を迎える為、早速、兄の家に行き伝えると、兄は快く承諾してくれた。
「最近、戦で手柄を立てているそうじゃないか。俺の処には息子が五人いるからな。まあ、お前の処に正吾と同じ年頃の娘がいるようだし、出世祝いに正吾をやろう」
そこで兄は黙って聞いていた正吾に聞いた。
「何か異存はないか?」
正吾は兄から主に正面を向けて深々と頭を下げて言った。
「養子の件、有り難くお受け致します。」
こうして主は、正吾を養子に迎え名を正太郎に改めさせた。
主は、正太郎を綾姫さまに逢わせるのが不安であったが、意を決し逢わせた。見知らぬ男子が居たので、綾姫さまは驚いて部屋に引き籠ってしまったそうだ。困り果てていると、正太郎は引き籠って怯えている綾姫さまに優しく語りかけたそうな。ようやく、綾姫さまは部屋から出てきて微笑んだそうだ。
それから二人は仲良くいつも一緒にいるようになり、幸せな日々を過ごしていたそうな。しかし、幸せはそう長くは続かなかった。
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