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正太郎が十五才、綾姫さまが十四才になった頃、村の近くで戦が長続きし、村が盗賊に目を付けられ荒らされたりした。それだけでなく、旱(ひでり)が続き作物が育たず、地震が頻繁に起こるようになった。
村人達は、不幸な出来事が続いているのは綾姫さまの所為なのではないかと思うようになり、中川家に綾姫さまを生贄しろと訴えた。当然、主や妻、正太郎がそれを許さなかったが村人達は鎮まらず、今にも押しかけて来る勢いだった。
綾姫さまが家に押しかけようとする村人達に言い放った。
「では、こうしましょう。私が持っているこの箱の中に複数の紙が入っています。どれか一枚だけ着物の柄が書かれた紙があります。書かれていた柄の着物を着ていた方が生贄になると言うのはどうでしょう。勿論、変更は致しません。生贄となる方には明朝、吊り橋から川に身投げをして貰います。異存はありませんね?」
綾姫さまの提案に村人達は承知し、正太郎達は驚き、辞めるように説得したが聞き入れて貰えず、渋々承知した。
村人達は次々と箱の中を探り引いたがなかなか書かれた紙が出てこない。そこで村人達は中川家の人々にも引かせることにした。それでも出てこなかったそうだ。
とうとう最後の一人、綾姫さまが引くことになった。綾姫さまが引くと中から『緋い色の着物』と書かれていた紙が出てきた。村人達の中には緋い色の着物を着たものは居らず、中川家の中では綾姫さまだけが赤い着物を着ており、綾姫さまが生贄となることが決ってしまった。
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