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このことを葬式から帰って来たお父さん達に言うと、驚いて儂に言ったんだ。
「裕一郎、その方は、綾姫さまだ。綾姫さまがお前を護って下さったんだ!!」
ここでおじいちゃんはあの少女が綾姫さまなのだと初めて知ったんだよ。
後日、分かったことなのだが、あのダム建設者達は、土地の権利書を奪い、さらに村全体を燃やそうとしていたらしい。あの水筒の中身はガソリンが入っていたのだという事が分かった。
それを知ったダム建設の偉い人が、そのダム建設者達をクビにし、お詫びにこの村のダム建設を取り止めてくれたのだ。
儂はこの時、綾姫さまがこの村を護ってくれたんだと思った。儂はいつか、また、綾姫さまに逢ったらお礼を言いたいと思っているんだが、なかなか逢えなくてな。
儂が無理でも、翔太お前なら綾姫さまに逢えるかも知れないからな。その時は、おじいちゃんがお礼をしたいと言っておいてくれるかい。綾姫さまに逢ったら仲良くするんだぞ。
儂がそう言うと翔太は元気よく返事をして言った。
「うん!! 僕、綾姫さまに逢ったら仲良くするし、おじいちゃんがお礼をしたいってちゃんと言うよ!」
そうか、そうか。仲良くしてくれるか。
儂が言うと、翔太が饅頭を持って儂に言った。
「あのね、おじいちゃん。このお饅頭をね。お姉ちゃんにもあげていい?」
ん? お姉ちゃん? 早速、仲良くなった子がいるのかい。
翔太は大きく頷いてから言った。
「うん! 僕がおじいちゃんの家に一人で行く時、道に迷っちゃたんだ。そしたら、通りかかった緋い着物を着たお姉ちゃんが助けてくれたんだ」
翔太の言葉に驚いていると、庭園に緋い着物を着た少女が微笑みながら佇んでいたような気がした。
完
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